ホルモン注射とは
ホルモンにはたくさんの種類がありますが、
その一つに「性ホルモン」というホルモンがあり、
ステロイドホルモンの一種になります。
それがいわゆる男性ホルモン、女性ホルモンです。
男性も女性も体の中では、男性ホルモン、女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)を持っています。男性と女性の性ホルモンの差は、分泌される性ホルモンの違いではなく、ホルモンのバランスの違いです。
GID(性同一性障害)のホルモン療法では、外から性ホルモンを取り入れることで、ホルモンのバランスを目的の性別に合わせていきます。
女性→男性(FTM)
FTMの方に対する男性ホルモンとしては、当院ではテスチノンデポー筋注250mg(テストステロンエナント酸エステル注射液)があります。1回250mgを2~4週間隔で筋肉注射します。テストステロンは主に男性の睾丸から分泌される男性ホルモンでステロイドの一種です。
性ホルモンの主な役割
テストステロンは主に男性の睾丸から分泌される男性ホルモンでステロイドの一種です。女性の場合、男性に比べて微量ではありますが卵巣や副腎皮質から分泌されます。エストロゲン分泌を抑える効果がありますが、過剰投与すると体内でエストロゲンに変化しかえってテストステロンの効果を抑えてしまう可能性があります。
身体的特徴の変化
- 月経停止
- 男性型体型、乳腺の萎縮と皮下脂肪の減少により乳房の縮小
- 皮下脂肪の減少、筋肉・内臓脂肪の増加
- 身体の多毛化、色素沈着、皮膚の乾燥
- 痤瘡(にきび)、毛のう炎、汗腺症
- 頭髪の減少
- 声の低音化
- 性欲の亢進
- 陰核の肥大
※成人女性の場合、声変わりや骨格の変化はあまり期待できません。
副作用および併発症
- 深部静脈血栓症、心不全、心筋梗塞、脳梗塞
- 肝機能障害、多血症
- 著名な体重増加(血清コレステロールの上昇)
- 生殖機能の喪失
男性→女性(MTF)
MTFの方に対する女性ホルモンとしては、当院では持続性エストロゲン製剤であるプロギノンデポー筋注があります。1回5~10mgを2~4週間隔で筋肉注射します。女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンがありますが、女性らしい体つきを維持しているのが主にエストロゲンです。
性ホルモンの主な役割
睾丸での男性ホルモンや精子の生産の抑制をします。半年以上摂取すると精子形成が永久的にダメージを受けるので注意が必要です。
乳腺の発達を促し乳房のボリュームが期待できます。乳房の脂肪量増加と合わせて胸が大きくなりますが、ホルモン注射だけで巨乳になることはありません。
卵胞ホルモンは血液を固まらせるための物質を増加します。血栓のリスクが増える為、手術を受ける予定がある場合は3週間前から中断して下さい。
身体的特徴の変化
- 乳房の増大、乳腺と乳房の脂肪が増加します
- 体脂肪の付き方の変化、女性的な顔つきになり腰回りの脂肪が増えます。
- 勃起力の低下、性欲の低下、精子量の減少
- 性格の女性化(涙もろくなるなど)
- 男性はげの改善、頭髪の女性化(毛が細くなる、密度が高くなる)
- 体毛やひげの減少
- 肌の女性化
※成人男性の場合、声変わりや骨格の変化はあまり期待できません。
副作用および併発症
- 深部静脈血栓症、心不全、心筋梗塞、脳梗塞
- 肝機能障害、貧血
- 頭痛、めまい
- 乳頭の過敏症、乳輪色素沈着、乳がん
- 精巣、前立腺の萎縮
- 生殖機能の喪失